Cracker Jack

近藤俊弥さん,渋谷直樹さん,立原淳貴さんの3人からなるCracker Jack。先日行われたDOUBLE DUTCH CONTEST WORLD 2013にて見事優勝を果たしたこのチームから渋谷さん(しーくん)と立原さん(たっちー)にインタビュー。2011年、2012年とともに決勝のバトルまで勝ち進んだが惜しくも敗退。3年目にしてようやくつかんだ優勝、その思いとは・・・。

 


※優勝を決めたバトル決勝。Cracker Jack VS Hot Dog USA

 

I (IKEPON) お願いします。まずコンテスト優勝のお気持ちを聞かせてください。

 

S (しーくん) 今年の優勝は素直に嬉しかったです。2年前に初めてこの3人で出たときから、トシヤが常に「行けるぞ!」と言っていたんです.だけど僕も、たぶんたっちーも,最初は絶対の自信はなかった,というのが本音です。でも終わってみるとフュージョンでも良い評価が得られてそれが非常に自信になった。そのおかげでこの2年間やってこれました。僕らの信じたオンリーワンのスタイルをやっていけば評価される、と。あと仲間を信じてついていけばやれるっていうのもありましたね。なので今回の優勝は本当に嬉しかったです。

 

T (たっちー) バトルの最終結果発表のときに、サダさんが真ん中にいて反対側にはHot Dog USAがいて、サダさんがバッて手を挙げたじゃん。サダさんと手をつないでたのはしーくんだったのよ。で、しーくんの右手だけがあがって一人で「うぉー!!」って喜んでるけど、おれら分かんないじゃん!笑 手挙げてよ!笑

 

S 申し訳ない。笑 すぐチーム名も呼ばれると思って。笑

 

I 去年、一昨年のコンテストでは2大会とも入賞されて、惜しくも優勝には及ばなかったですが、そのときのお気持ちは?

 

T 僕の感覚で言うと1回目はただガムシャラだったんだよね。ガムシャラだったし、コンテストに出るのが2年ぶりだったからとりあえず誰かの印象に残れば良いかなって思っていたくらいだった。もともと4人いたのが急遽3人になって、「しんどいけど、まあがんばるか!」っていうのが最初だった。そういう中でパフォーマンス部門では1位になることが出来て、このスタイルは評価されるんだって思って、2回目のコンテストはもういけるだろうと思っていたら、バトルで負けてしまって。そして今回の3回目、マインドセットとしては「もういい加減、勝ちたい」っていう感覚。だからかなりの気持ちを入れたし、それが優勝につながって本当に嬉しい。変な言い方すると狙ってたし、もう狙うしかないよね、みたいな感じ。「出ることに意味がある」「バトルに残れればいい」っていうレベルじゃなくなっちゃってたな。背水の陣で今年がラストチャンスなんだっていうぐらいの気持ちの強さだよね。

 

I なるほど。今後はコンテスト等に出場されることはないということですかね。

 

T そんなことはないですよ。僕らのチームってことあるごとに3人で集まって、今後どうする?っていう話をするんですけど、ダブルダッチだけではなく、各自仕事へのコミットも考えて判断していく、ということです。そのときの状況により・・・という感じかな。出られるなら出たいですね。

 

S 後輩のチームにstill社員というチームがあるんです.そのstill社員が「ウチラが勝つまで,やめるな」と言ってくれているように、僕らを倒すことが目標だと言ってくれてる後輩もいるんで、やっぱり出来る限り続けたいという気持ちもあります。あと、純粋に楽しいし。笑

 

T 同時に苦しいんだけどね。笑 来年出るとなるとまた新たにニューネスを産まなければならないわけじゃん。

 

S 僕らの中でもよく話すんだけど、僕らは現役の人たちに比べてほら,若くないじゃないですか.笑 体力的に劣っている点ももちろんあるわけですよ.その中で,僕らは持ってるポテンシャルをフルに引き出してる状態で、これから成長してくる人達とどうやって戦っていくかっていうのを常に考えていかなければならない,自分たちもそれ以上に成長しなくちゃならない.そこは大変ですね。だから毎回パフォーマンスの中に何らかの世界初の試みを入れるようにしています。そこを考えるのが一番難しくもあり、面白くもあります。感想を聞くのがすごい楽しみなんです。

 

I Cracker Jackの皆さんは会社の出勤前に朝練をしていたり、新しさを産むためのそういった苦しみもありながらも、ここまでやりきれたのはどうしてだと思いますか。お二人にとってCracker Jackとはどういった存在だったのでしょうか。

 

S トシヤは常に言ってるんですけど、「見てくれている人や応援してくれている人に何かを還元したい、何かを感じてほしい」と。それから「Cracker Jackでの経験が僕ら自身の糧にならなきゃチームとしてやっている意味がない」とも。僕も本当にそう思いますし,こういうスタンスでやっていけてるのはすごく自分にとって大きいなと思います。もちろん,ダブルダッチが楽しくてやっているってのも大きいんですけど。“人とのつながり”という意味では、僕らのためにわざわざうちわを作って応援してくれるような仲間がいたり、FISACのアジア大会・世界大会を通じて知り合った海外の方からも応援してもらえたり。その中で、僕らの全力を見せるということと、僕自身が経験として新しいものを得られる、という面でこのチームは僕にとって大きな存在ですね。

※応援団作のうちわ

 

※日本代表として出場した2012年FISAC世界大会@フロリダでの優勝演技。

 

T 応援してくれてる人が多いっていうのはCracker Jackをやる上で一つの大きなモチベーションなんだけど、もう一つ、これはどちらかというと個人的なモチベーションなんだけど、後輩たちにD-actにいても強くなれるんだよ、D-actにもすごい先輩がいるんだよっていう安心感を与えたかった。僕はD-actというサークルの初代代表をやっていて、日体大が強くて歯が立たなかった時代に、後輩の中にはこのサークルでダブルダッチをしていて勝てるんだろうか、強くなれるんだろうかっていう疑問を持ってしまう子も出てきた。自分の中ですごく印象的だった出来事として、後輩で最初D-actに入ったんだけど、本気でダブルダッチをやりたいから、という理由でD-actから離れて行った子がいるのよ。「D-actにいて強くなれるのかなって思う。私は強くなって大会で勝てるような人になりたい」と。その子の考えを否定する訳じゃないし、その子がそう思うんだったらそうした方が良いと思ったんだけど、ただ「D-actにいたら勝てないんだ」って思わせてしまったのが自分の中ですごく申し訳なくて。D-actって,学祭とかで楽しくやりたいっていう人もいるんだけど、大会に出て本気でやりたいっていう人もたくさんいる.だから、そういう人たちに対してD-actにいても強くなれるんだよ、D-actにもすごい先輩がいるんだよ、っていうことを示したいと僕の中では常に思っていた。それを実現できるのがCracker Jackていうチームだった。このチームだったら優勝できるかもしれないって思って、もうおれはここに賭けようと。自分の欲求としての勝ちたい、だけではなく、人それぞれだとは思うけど、僕は「後輩の手本になれるように」というように外部にモチベーションみたいなものがあると大きいのかなあと思う。

 

I 1、2、3年目とコンテストに挑戦していく中でCracker Jackがチームとして変わってきたことはありましたか。

 

S 大会が終わるごとに結果・評価が返ってくるから心構えとかは変わっていったけど、コアの部分は変わってない気がする。リーダーのトシヤはダブルダッチも“ビジネス的”に考える人なんです。“お金的”に考えるっていう意味じゃなく、「自分たちが何を提供できるのか」ってことを軸に考えて、チーム内でもいつもその軸で話し合いながら、演技を毎年作ってきました。そこは変わらないかなって思います。僕もいろいろとチームをやってきたけど、こういうチームは初めて。ここまで自分たちがどこまで成長できるかとか、応援してくれてる人に何を還元できるのかっていうことを突き詰めているチームは僕は初めてで、そこはCracker Jackとしてここまでくる上で非常に大きなファクターだったかなって思います。

 

T そういう意味では、我々が提供している価値っていうのはデモンストレーションを見てもらって、「Cracker Jackってこういうスタイルなんだ」って思ってもらうことだけではなくて、「あの人たちって社会人なの!?」っていう部分も含まれてて。ダブルダッチ界といえば今までは、学生がやるもので、卒業と同時に引退するものです、卒業しても続けるんだったら仕事しないでプロとしてやっていきます、っていう流れがあった中で、僕らの新しかったことっていうのは、社会人でもダブルダッチできるんだよ、っていうことの提案だと思ってるのね。だから僕らが出ていったおかげで社会人チームって増えたと思うのよね。学生が終わったら引退だ、っていう流れを変えてきたのは僕らのスタイルだと思ってて、そこも実は我々が提供してるニューネスだったりする。仕事しながらでもダブルダッチが出来るんだよっていうことをダブルダッチ界に提供できたのはすごくよかったし、だからこそ応援してくれる人が多いと思う。さっきの話の、うちわ作ってくれる奴らなんて、僕らの同期なのよ。でもそいつらからすると仕事をしながら、忙しいのにダブルダッチをやっているのがすごいと思う。だから応援するよ、っていうような感じで応援してくれてる。僕らが始めた、社会人でもダブルダッチが出来るんだよ、っていうスタイルを応援してくれてるんだから、そこに対して返さなきゃ、っていうようにCracker Jackは当時いろんな新しさがあったんだよね。

 

S チームで話してる中で「プロセス」っていう言葉がしょっちゅう出てくるんです。結果だけじゃなくて,僕らが積み重ねてきた普段の練習もそうだし、今までの10年間も含めて見てもらって、感動してもらえるようにっていう概念がよく出てくるんです。普段からどういう風に練習して、どういうステップを踏んでここまで来たのかっていうのも見てもらいたくて、ずっとやってきました。

 

T たぶんCracker Jackっていうチームが最初に出てきた時は、現役の子とかはおれらのことを後輩に思ってたと思う。だってCracker Jackっていうチームはそれまでなかったし、新しく出てきたってことは1年生か、って。そういうのを考えると、社会人でもダブルダッチできるっていうインパクトは与えられたんじゃないかなと。

 

I 僕もそのインパクトを与えられた一人でした。

 

T そういうふうに言ってくれる人がいるっていうのは、我々からしたらほんと嬉しいよ。変な話、学生の時やってなかったけど、社会人になってからダブルダッチを始めて上位に食い込もうとするようなチームがあっても良いじゃん。別に学生だけのスポーツじゃないんだから。

 

I 最後に応援してくれている人への一言をお願いします。

 

S いつも僕たちを、ダッチに限らず応援してくれて心強いです。本当にありがとうございます。ダブルダッチ以外の面でもファンでいてほしいですね。笑 お互いにいろいろと楽しくやっていきましょう、という気持ちでいっぱいです。

 

T 応援してくれてる方には本当に感謝してます。俺らのスタイル、ダブルダッチだけではなくてね、それを応援してくださる方がいる限り僕らも頑張っていきますので、以後よろしくお願いします。