YOSSY

 

立命館大学BKC/Fusion Of Gambit所属。

タクミ、ヨッシー、ジュニア、ヒロキ、マイ、エリコの6人からなるチーム「戎」の主要メンバー。2012年12月にNYで開催されたNDDLで見事優勝を果たし、関西勢からは初めての世界一となった。そんなヨッシーに世界一となった今の心境や、今に至るまでの過程を話してもらった。

 

----------------------------------------------------------------------------------

 

IKEPON(以下I) 関西から初の世界一となった感想は?

 

YOSSY(以下Y やっぱり嬉しいですけど、実感がないですね。実感がない、というのが一番かもしれないです。正直、世界一取るぞ!という感じだったのではなく、NY行きが決まってから、アポロシアターという舞台でどこまで観客を楽しませられるか、とか、お客さんがどんな反応するんやろう、という気持ちのほうが強かったです。

 

I DELIGHT JAPAN優勝っていうところは狙っていたのかな?

 

Y 僕個人としては、JAPAN優勝は狙ってましたね。関西にJAPANを持ってくること、関西がEO-CENCe(※1)に続き2連覇っていうのを狙ってました。

結局Eager-Beaver(※2)が優勝しちゃったんですけどねw

 

I WE LOVE DOUBLE DUTCH2012からDELIGHT WEST2012に向けてものすごくデモがよくなっていたんだけど、なにかきっかけがあったの?

 

 

 

Y そうですね、一位を狙うという感覚がなくなったことですかね。WESTまではチームで結果を残せたことがほとんどなかったんですけど、リーダーのタクミは「勝たなきゃ意味がない」という考え方が強かったので、チーム内でその辺のプレッシャーなんかもあって。でもなかなか結果がついてこなくて。 

今のデモ曲を見つけてパフォーマンスをつくってからは、一位を取るというよりどれだけいいものを作れるか、どれだけお客さんを楽しませられるか、という感覚にみんな変わってきた。そこからNDDLまでは一位をとろうとか、勝とうということをメンバー間で言うことがなくなりました。 

 

I じゃあ勝ちにいかなくなってから勝てるようになったという感じなんだ?

 

Y 本当にそうですね!「このパフォーマンスをどれだけ人の心に残せるか」っていう意識に変わってからの方がミスも減りましたし、なにより表情や勢いが出てきました。

 

I なるほど。元々「勝たなきゃ意味がない」っていう考え方だったのが、そんなふうに変わってきたきっかけはなんだったの?

 

Y 一番のきっかけはヨウさん(3)との出会いだと思います。CONTEST前、このままでは絶対に勝てないし、何も残せずに終わってしまいそうだな、と思っていたので、何かを変えなければ!と、ヨウさんにチームの現状を見てもらうようになりました。なにか自分たちが変わるきっかけになればと。

縄や技術的なところも見てもらったんですけど、それよりもチームとしてのあり方・パフォーマンスに対する姿勢を一番教えてもらいました。「なんで楽しませたいのか?」「なんでこの曲なのか?」と、理由をすごく聞く人なので、それに応えようと自分たちで意見交換をするうちに、デモに対する考えがメンバー間でまとまっていきました。それまでは「この曲のココすること無いなー」という感じで、とにかくデモの隙間を埋めるイメージだったんですけど、ヨウさんに出会ってからは意見がまとまるようになってきて、デモが出来上がるのが早かったですね。

 

I デモを作るのが早くなったのは、練習時間外でメンバー皆が常にデモのことを考えてくるようになったからっていうのもあるのかな?

 

Y まあやっぱりそれもあるんですけど、最後のパフォーマンスをつくるにあたってめちゃくちゃ悩む部分は有りましたね。「ここはこういう雰囲気で、こういう表情で・・・」って、皆の中で共通のイメージはあるんですけど、それをカタチにするのがめちゃくちゃ難しくて・・・

 

I 例えばデモのどの部分?

 

Y 特にデモの入りとヒロキの背面後の4人ムーブはすっごい悩みましたね。こういう感じでこういう気持ちを伝えたい、というのは全員の中にあったんですけど、それをどう表現するのかは最後まで悩みました。4人ムーブも一つ一つに意味があるし伝えたいことはあるのに・・・という感じで。とにかくチーム6人全員で伝えられるムーブというものを絶対持っておきたくて、それをつくるとなるとやっぱり一番悩みましたね。あとの部分はササッとできた感覚がありました。

 

I 悩んだ時はどうやって乗り越えてきたの?特に戎は勢いだけではなく細かいニュアンスの表現が多くて、時間をかけてつくりこんだんだろうなーという印象があるけど。

 

Y 一番最初に関しては、とにかくまずは曲から受けるイメージを、分からないなりに言葉にしていきました。縄を開き始める時とか、「ここはゾワンって感じ欲しいよな!縄はこう開いたほうがゾワンって感じしいひん?」っていう感じで試行錯誤し続けていきました。お客さんから見たときにどうみえるかを基準に。

 

I じゃあやっぱり思いつくものをやってみて、しっくりくるかどうかを試していった感じなんだ?

 

Y もちろんそうですね!あと、この2箇所に関しては絶対に他のどこかから持ってきたくなかったんですよね!好きなチームはたくさんあるんですけど、自分たちの中からオリジナルのものをひねり出したかったんです。絶対に自分たちの伝えたいものがあるはずだから、それをカタチにたいという気持ちがありました。その分しっくりくるまでにすごく時間がかかりましたけど。

 

I 逆にここはこのチームをイメージして作ったなーってとこはあるの?w

 

Y ラストの雰囲気やマイのムーブはちょっとMajestic Dixee's(4)をイメージしましたね。Majestic Dixee'sのあのハートフルな感じが出せたら自分たちにもピッタリだなぁと思ったんですけど、結局あれよりはもっと勢いのある感じになりました。でも要所要所意識した部分はあります。

 

 

I ダッチのチームで意識したチームは? 

 

Y 僕は昔から一番好きなチームはVi-tour(5)で、一個一個の音や、人の動きを余さない感じが好きなんです。でも一番影響を受けたのはやっぱりFusion Of Gambitの先輩たちかなあとは思います。僕、正直最初は「個性を出すこと」の良さがわからなかったんですよね。でも一番その良さが分かったのが一つ上の代Ballon Dor(※6、以下バロン)のデモを見た時です。バロンのトシキさんとか、言ったらダブルダッチじゃないじゃないですか?w でもダッチじゃないけどあの人がパフォーマンスとして一番見ていて気持ちいいし、見たい!と思えるじゃないですか。それを見て、ひとりひとりの「個性を出す」ってこういうことか!と思いました。逆に「チームの色を出す」ということに関してはHUMPTY DUMPTY(※7、以下HUMPTY)を見て学びました。 

 

I バロンが「個性」、HUMPTYが「チームの色」、それを自分たちに置き換えた場合はこれだ!っていうのがあのデモだったんだ?

 

Y そうですね!バロンのトシキさんを見て、どうやったらヒロキのキャラが引き立つかなって考えたり、ジュニアの人間味がどうやったら出せるかを考えたり・・・。チームで一個のムーブを魅せるってことや、一つのものを伝えるってことを考えたときに、HUMPTYの4人ムーブを見て感動しました。あのフリの合わせ方やフォーメーション、あれはホンマに感動しました。同時にバロンの「個性」の部分を含め、そういうHUMPTYの「一体感」という要素が欲しかったんです。

 

 

I なるほど!バロンとHUMPTYのそれぞれの良さが両方欲しかった、という感じなんだね。たしかに戎はチームの一体感があるのに、ひとりひとりのキャラもちゃんと引き立っているよね。こいつはこういうキャラっていうのが。 

 

Y それが結構欲しかったんですよね、やっぱり!何もスキル無くても、こいつを目立たせてやりたい!絶対全員を目立たせてやりたい!という気持ちが強くて、それをずっとタクミと話してたんですよ。見ててそっちの方が幸せじゃないですか?ステージに立つからにはメンバー全員に役割がないと、パフォーマンスしてて楽しくなかったし、そっちの方がやりがいがありますよね。このデモをみせることで全員が輝けんねんぞ!っていう感じに作れてよかったです。 

 

I 戎のデモではただ座るって言う場面が基本的に無いよね?

 

Y ないですね。僕のソロのところで一瞬マイが後ろで座ってるんですけどw

 

I でもそれも数ある選択肢の中から「座る」っていう動作を選んだんだよね。単に何もできないから座るっていうわけじゃないもんね。

 

Y そうですね、僕のソロではスピード感を出したくて、マイは座ったほうがいいかなと。

 

I 戎のデモではホントに一個一個の動きに意味があるし、一個一個の動きが最適解って感じがするね。

 

Y それが一番ですね!一個一個に意味があるように!っていうぐらい全部に意味を付けましたね。

 

I おれはそれがめちゃ苦手で一回作ったら「もうよくね?」って思っちゃうんだよねw だから次作るときは絶対何回も修正して緻密に作りたいな~と思うんだけどなw HUMPTYのデモを見てて思ったんだけど、縄の外でも全員が「魅せてる」よね?学祭のときに見て初めて気がついたんだけど、UMIのステップの時の後ろの三人も顔がデモに入りきってるんだよね。正面からじゃ顔見えないんだけど、3人とも顔はガチ!みたいな。あれはすげぇって思った!バロンはバロンで、としきとか下手しなにもダブルダッチしないところだったけど、最初のマイクパフォーマンスがデモの中で一番インパクト強いかもってくらいだもんね!

 

Y そうなんですよ!で、あれを見出したバロンドールの皆がやっぱりスゲーって思いましたし、それを学ばないとなぁと思いました。

 

I 逆にHUMPTYは個々人がHUMPTYのデモを演じきってる感じで、人間的な味を出してるって感じではなかったよね?そういう部分では戎はどっちも兼ね備えている印象があって、ひとりひとりのキャラもたってるのに、全員がパフォーマンスのために徹底して演じきってる印象もあるよね。

 

Y それもやっぱり先輩2つのチームを見てきたからこそのものですね!

 

I なるほど!「個性」と「チームの色」、どちらも最高の先生が直にいたっていう感じだ。

じゃあ話は少し変わるけど、3年間を振り返って一番辛かった時期っていつ?

 

Y 2回生時のDELIGHT WEST大会前(2011)2回生時のCONTEST(2012)の間の時期ですね。ホンマに精神的につらかったですね。やりたいことがまとまらないし、スキルも追いつかないし・・・その一方で同期のM.A.D(8)は周りから良い評価もうけてるし。Beck-MaN(9)とかも自分たちの方向性を見つけ始めてて、おれらホントにJAPANにいけるのかなぁという焦りがありました。

もう一つしんどかったのは3回生時のDELIGHT WEST前ですね。精神的というよりかは体力的にって感じですけど。練習が凄まじくて朝10時に集まって、夜10時まで練習もしくはデモを考えて、縄練してって感じで・・・。ラストの曲をCONTEST終わった後にはもう決めてて、この曲で最後を迎えたい!という吹っ切れ感があったので精神的には今までよりはマシでしたね。まあマシやったっていうぐらいですけどw

 

I 悩みのレベルが一個上に上がったって感じかな?

 

Y そうですね。ただそこに至るまでに、WEST2011後はとにかく色んな先輩に話を聞きに行ったんですよ!デモの映像を持って。全くしゃべったことない先輩から身近な先輩まで片っぱしから・・・。「曲がよくわからん」とか、「こんなに質の低いアクロならいらないんじゃない?」とか、「女の子の二人何やってるかわからんな」とか・・・いろいろ言われて、どう直していくかを考えていきました。この過程があったからこそCONTESTではアクロの質も上がったし、ひとりひとりのスキルが上がったものを見せられました。実は僕らデライトで悩んでそのあとGOLDでもう一回悩んだんですよね!w GOLDではバトルに出ずにショーケース一本に絞ってて・・・WEST2011後、先輩に話を聞いたとき、「GOLDでは見といてください!」とか言ってたんですけど、GOLDのショーケースもまあまあイマイチなかんじで・・・。まあその理由もいろいろあって、テンション高い感じで行った方がいいんじゃないかと思って邦楽のロックとか使ってたんですけど、イマイチそれも乗り切れないしバロンみたいやなって言われたり・・・。

やっぱり違ったかーって思ったんですけど、「これは違うな」って分かったことがCONTESTにつながりましたね。CONTESTではSwing Jazz(10)を使ったパフォーマンスでお客さんを楽しませることに重点を置いて、ストーリー性のあるムーブをしてみたりしました。っていうのもみんなの話を聞いてると、エリコもクラシックバレエをやっていて美しい動きが得意なんですよ。マイもファンクやってたんで美しい動きが得意で!

CONTEST前まで僕はずっとBREAKIN'の動画しか見てなかったんです。Battle Of The Yearとかバトルの動画とか・・・でも、ちょうどその頃からリョウさん・ケントさん(HUMPTY)とかいろんな人に「このダンスの動画見てみなよ」って勧められるものを見ていくうちに「あーパフォマンスってこういうものか」ということに何となく気づいてきて、自分たちでもこういうものをやっていきたいなと思うようになりました。それから一曲目にオシャレなJazzミュージックを使ってみると、思っていたよりもしっくりきましたし、周りの人からの評価も上がったんですよね。もちろんヨウさんにチームを見てもらうようになったことも大きかったですし。

 

 

I ヨウさんに見てもらうようになったのっていつぐらいなの? 

 

Y GOLD後くらいですね。バロンもヨウさんに見てもらってたこともあって、自分たちもこのままやってても埒があかんし、ということで・・・かといってヨウさんが曲を決めて、こういう動きをして、っていうのを指示するわけじゃなくて、パフォーマンスにとって大事なことを教えてくれたり、自分たちのものを引き出してくれるだけなんですよ。ただ、あの人が言ってくれる言葉によって変わってくる部分は大きかったですね。そこからチーム皆で悩んで悩んで見つけていく感じでしたね。 

 

I やっぱり戎にとってヨウさんの存在はかなり大きかったんだね。ではさっき話にも少し出ていたんだけど、ヨッシーにとって同サークルの同期M.A.Dの存在とは?

 

Y 何よりもマサのように確固たる何かをもっている奴が一人でもチームにいるのはデカイなあと思ってました。やることの発想もよかったし、ダブルダッチして遊んでるんやろうなーっていう印象がすごくありました。やっぱりデモをつくる奴の色が、チームの色の半分、っていうところもあるじゃないですか。だからマサみたいな奴がチームにいることは大きいな、というのはずっと思ってましたね。

あと、Dig Up Treasureとかは同期同士で応援し合ってみんなで頑張っていこうという印象があったんですけど、そういう意味では戎とM.A.Dはどちらかというとライバル感が強かったかもしれないです。M.A.Dの練習風景を見て「あーココはいい感じだなあ。でもココは負けへんなあ」とかっていうのが、僕個人としては大きかったかもしれないです。まあ自分たちに余裕がなかったことが一番の原因だったのかもしれないんですけど。僕もタクミも自信のないものを人に見られたくないところがあって、作っていく中でM.A.Dにアドバイスをもらうこととか、意見を聞くことはなかったですね。もちろん私生活ではM.A.Dと戎はめちゃくちゃ仲いいんです!悪い奴がおらんし、皆ホンマにいい奴ですね!

 

I これから大会を目指していく人に向けてメッセージをお願いします。

 

Y 曲選びに関して、自分たちにあった曲を見つけるのに悩むのは絶対あると思うんです。ただその見つけ方を細かく口で言おうと思ってもうまく言えないんですよね。自然とそうなったとしか・・・。でも見つけたときはこれしかない!っていう感覚や、この曲で何をしてるかがつくる前段階から目に浮かぶっていう感覚はありました。あいつらココでこんな顔してるなーとか。

でもそこにもっていくには日常生活のメンバーの癖や性格、表情を知っておかないとダメだと思います。こいつは普段はこんな感じで、こういうところがこいつの良さだなっていうところを。ジュニアとか全然面白い訳じゃないんですけど、紳士で、やってって言ったことはやってくれる真面目さとか。あと意外とダンスがめっちゃ好きとかw M.A.Dのフリを、横でニヤニヤしながらめっちゃ真似しよるんですよ。それはめっちゃ下手くそなんですけど、意外とダンスが好きなんですよね!・・・っていうのを知ってたから、そこまで難しくない社交ダンス風のフリだったらあいつも楽しめるし!っていう感じで。あとはジュニアから花束をもらうのはエリコじゃなくてマイだなーって。エリコがクールな表情が映えるのに対して、マイはいい笑顔をするからあそこはマイの笑顔がみたいかなーって。

あっそういえば、CONTEST終わってからすっごくチームの仲は良くなりましたね。チームの方向性が見え始めた少し前くらいから、仲は良くなってきましたね。練習を楽しくしようっていう意識もありましたし、一緒にいる時間が長くなってきて。戎は自宅生が多かったので今まであまり一緒にご飯とかいけてなかったんですけど、一緒にご飯を食べに行く時間を作ったりとかもコンテスト前くらいからするようになりましたね。

やっぱり自分たちにあった曲を見つけるためには、こういったところが必要だと思います。メンバーの個性を知って、仲良くなって、普段のそいつらの良さをどんな曲だったら出せるかな?っていうのを想像できるようになって初めてこの曲が目に付いたわけで!ただ曲だけを探してても一生見つからないと思います。

 

------------------------------------------------------------------------------------------

 

(※1)EO-CENCe:立命館大学衣笠キャンパス、Dig Up Treasureの8期生チーム。DOUBLE DUTCH DELIGHT 2011にて優勝。

 

(※2)Eager-Beaver:日本体育大学、乱縄の12期生チーム。DOUBLE DUTCH DELIGHT 2012にて優勝。

 

(※3)ヨウさん:立命館大学BKC、Fusion Of Gambitの3期生。現役時代はチームsKylishに所属。

 

(※4)Majestic Dixee's:DANCE@HERO 2nd SEASONに出場。ROUND3では戎と同じく「Relight my fire」を使用。

 

(※5)Vi-tour:京都産業大学、ダッチゃの5期生チーム。2回生時、3回生時共にDELIGHT JAPANに出場を果たし、3回生時にはJAPAN準優勝、NDDLにも出場している。

 

(※6)Ballon D'or:Fusion Of Gambitの6期生チーム。NDDL2011にて準優勝。

 

(※7)HUMPTY DUMPTY:Ballon D'orと同じくFusion Of Gambitの6期生チーム。DELIGHT WEST2011にて優勝。

 

(※8)M.A.D:戎と同じくFusion Of Gambitの7期生チーム。

 

(※9)BeCK-MaN:Dig Up Treasureの10期生チーム。戎、M.A.Dと同期。

 

(※10)Swing Jazz:戎がCONTEST2011で使用した楽曲。